【カレリアの歌う少女現る】Iki / Värttinä【北欧CD】
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ペリマンニ音楽研究家 三上紘司様より紹介文をお寄せいただきました。
フィンランドの民俗音楽バンドとして、JPPと人気と知名度を二分するヴァルティナ。その結成20周年にあたる年に出版されたアルバムが入荷しました。
ヴァルティナは、1983年、フィンランド東部北カレリア地方のレーッキュラという村で、この地方の伝統的な歌を演奏するバンドとして結成されました。
国内のみで2作品を発表した後、様々な事情でバンドを再編成。1991年に「Oi Dai」を発表すると、国際的な注目を集めます。
あくまでも伝統曲をベースにしながら、ハンガリーやブルガリア、ロシアの民謡、ロックやジャズといった「新しい」音楽を積極的に取り入れ、マシンガントークならぬ「マシンガンシンギング」というべきスタイルを確立します。
およそ2年おきという意欲的なペースで作品を発表した後、2003年、3度目となるバンドの再編成を経て発表されたのが、この「Iki」でした。
ボーカルは4人から3人になり、電子キーボードなどのエレクトロニクスをふんだんに用いた過去3作品から一転、アコースティック楽器とボーカルだけの編成に回帰したことで、爆発しそうなほどエネルギッシュだったサウンドは、歌詞とメロディにじっくりと耳を澄ませてみたいものに変わっています。
無伴奏のボーカル曲から始まり、ボーカル3人の掛け合いとハーモニーが美しい「Tuulen Tunto」、「Sepän Poika」と来て、4曲目の「Tauti」で、これまでのヴァルティナを知るファンは、「これぞ!」と感動するかもしれません。アグレッシヴな変拍子のメロディに、歯切れのよいリズムを刻むボーカルと伴奏。これぞヴァルティナ!
続く「Morsian」は、フィンランド語で「花嫁」を意味するタイトル。「私は永遠を誓い、永遠の不滅を誓います」花嫁の視点で描かれる、厳かで印象的な曲です。
そして「浮気男を鞭で追い出す」内容の「Nahkaruoska」では、「マシンガンシンギング」を彷彿とさせる小気味の良い歌に思わずニヤリ。
ここまで来たら後は最後の曲まで一気呵成。ボーカルを支えるバンドの躍動感溢れるインスト曲にひたり、再び無伴奏のボーカル曲「Syyllinen Syli (part 2)」で「Iki」は静かに、印象的に幕を閉じます。
ヴァルティナは、何度もメンバーを入れ替え、常に新しい音楽に挑戦してきました。伝統曲を歌わず、オリジナル曲だけの作品もありました。「Iki」は伝統曲5曲、オリジナル7曲とバランスのとれた作品。使う楽器も、カンテレやアコーディオン、ダブルベースに加え、ハーディー・ガーディーやポルトガルギターなど、「フィンランドの民俗音楽」を超え、「自分たちの音楽に必要な音」を選んでいるように思います。
3度目の大きな再編成、結成20周年。節目を迎えた直後のヴァルティナが打ち出すこれからの方向性を知る上でも、ぜひおすすめしたい一枚です。
BASEショッピングアプリでご覧の方はこちらのリンクから参考動画が見られます。
https://youtu.be/TlSPnk7j8DM
https://youtu.be/l9ozxHOXf8I
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